成人の3分の2が人生で一度は抱えるとも言われる腰痛。アメリカだけでも年間に600万人以上の症例があり、心臓疾患、ガンに続いて高い医療費が使われ、歩いての緊急外来数は全体で2番目に多い症例です。しかし日本でもアメリカでも毎年医療費、患者数、処方される薬の量までもが増加しています。様々な原因が挙げられますが、自己流の方法で一時的に楽になるために医療機関の受診が遅れることや痛みを抱える本人が医学的な診断や原因を理解していないことが挙げられます。これは一時的に症状が楽になっても完治させることは難しいでしょう。

絶対に必要な医学的診断

病院でレントゲンやMRI検査の結果『椎間板が狭くなっていると言われた』『特に異常は無いと言われた』『薬が出たが効かなかった』『治療が無かった』の声をよく耳にします。これは始めに病院で診断を受けたまでは正解だったのですが、その後に適確な治療を受ける事が出来なかった事に問題があります。またレントゲン、MRI以外の検査で診断ができる体の機能性、運動性の問題、診断を逃しているかもしれません。腰痛などの構造的な故障は画像診断だけではなくこれらと併用して、体の機能性、運動性を診断する検査が必要な事もあるのです。一方『楽になるので整体、マッサージ、鍼、カイロプラクティックに10年通っていた』『レントゲンは撮った事が無い』『病院や薬は嫌い』の声もよく聞きます。この問題点は治療、痛みの緩和以前に『医学的な診断』が欠落していることにあります。これではどれだけ痛みが楽になっても完治は無理です。胃癌で腹痛があるのにマッサージを受けたり、温めたりしても絶対に完治しません。ただこの場合も症状は楽になるかもしれないのです。ですので結果として体に良いと思って病院や薬を拒んできた後者の方が将来の健康が危険にさらされており、早めに処置を受ければ必要なかった手術が必要になったり、完治ができない状態になったりしてしまうこともあるのです。

自分も参加型の診療

腰痛を引き起こす原因はストレス、喫煙や生活環境因子など様々な原因がありますがその一つに体の機能障害、運動障害などがあります。これは日常生活や運動などで引き起こされた体の構造的な故障であり正しい診断で現状を把握し、必要な治療を受け、生活習慣の改善や適確なトレーニングを受ければ完治も望めます。また重篤な診断が告げられても症状をコントロールし、将来の手術を避け、最後まで元気に活動することが可能かもしれません。早期であれば手術ではなく運動やそれ以外の治療で完治するかもしれません。どの場合でも自分の症状をしっかりと理解して、ご自分が参加する診療をできるだけ早い段階で受けなければなりません。これは糖尿病、高血圧などの生活習慣病を思い浮かべるとわかりやすいですが、薬で症状を抑えることができても食生活や生活習慣を改善し体の治る力を引き出さなければ長期的に病気は悪化することと似ています。腰痛の場合も体の機能障害や生活に原因があるので、適確な診断、治療だけでなくご自分の症状をしっかり理解して医師と共に治す姿勢が大切なのです。世界一医療費が高い米国ですが、やはり医療機関の受診が遅れたためにお金では買えない将来の健康を無くしてしまう可能性を考慮するべきでしょう。自分で早期に症状をコントロールできれば将来の医療費が抑えられることは言うまでもありません。

『スポーツカイロ』と『カイロプラクティック』

アメリカのスポーツカイロは医学的な検査、診断を行いその後できるだけ薬、注射、手術以外の方法で筋肉骨格系の症状を診療する新しい分野です。2016年のオリンピックではアメリカのオリンピックチーム医師団のトップである医療主任を務め脚光を浴び、近年アメリカではプロ、アマを問わずスポーツ医療に必要不可欠な存在となっています。従来の一般的なカイロプラクティックは『背骨の曲がりを指摘、それを矯正することで神経の働きを良くする』と非常にシンプルな考えに基づいて治療がされてきました。しかし一般に医学的とは言い難い処置が取られてきたためにその他の医療機関とは全く別の治療を行ってきた歴史もあります。スポーツカイロは医学的な診断、検査、エビデンスを最も大切にするので、手術、注射などと併用して行う事もありますし特に矯正など昔のカイロプラクティック治療法にこだわる事もありません。診断によってできるだけナチュラルな治療を中心に完治させることを目的に診療を行います。